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「なんのために働いているのか、わからない」「仕事のイメージって、たいへんなことばかり」――いま、こんな声をよく聞きます。私たち人間にとって、働くとはどういうことなのか、関西勤労者教育協会の中田進さんといっしょに考えていきます(民青新聞7月10日〜8月7日付に4回連載で掲載)。


働くことってなんだろう

中田 進・関西勤労者教育協会

【第1回】私たちにとって、働くとは

【第2回】働きがいを奪うもの

【第3回】人間らしく働き、生きるためのルール

【最終回】学んで元気、働きがいある職場と社会を


■私たちにとって、働くとは■

■働くときに、人間らしく生きる実感が

これから4回にわたって、「働くこと」について、みんなで考えましょう。

「お疲れー」「お疲れさま」と、仲間と声をかけあって、一日の仕事を終え職場を後にするとき、みなさんはどんな気持ちですか。

自分の仕事が、認められ「役に立った」と実感がもて、何かこううれしくなるときは「幸せ」ですね。また、うまくできなくて悩んでいた仕事が、考え工夫し先輩から学び「できるようになった」ときも、よろこびですね。

「社会の役に立つこと」「人間的に成長すること」など、そもそも「働く」ことには「人間らしく生きる」ための要素があるのでしょうね。

「働く」ことには、他の何ものにもかえがたい魅力があります。人間は本来、人と人とのつながりのなかで生きる、つまり「社会的な存在」なんですね。みなさんは、子として親につながり、すでに結婚し子どものいる人は、親として子につながり生きています。そのほか兄弟姉妹としてのつながりや友人同士のつながりなど、多くのつながりをもって生きています。その「つながり」のなかで、毎日の活動的時間の大部分を「働く」ことで費やす私たちにとって、「働く」ことでの「つながり」は、もっとも大きい意味をもつ「つながり」ではないでしょうか。この「働く」なかで、役立つ実感がもてたり、成長のよろこびが感じられる日々であれば、人間らしく生きているといえるでしょう。

■働くことがつらく、苦しくなって

「よろこび」や「誇り」が感じられ、本来もっとも人間的ですてきな世界であるはずの「働く」ことが、なぜいまつらく、苦しいものになっているのでしょう。

子どものころから、たいへんな時間をつかい努力して多くのことを学び、学校を卒業し、いよいよ社会に出て、「役に立ちたい」「成長したい」などの願いを胸に働きはじめたのに、みなさんを待っていた職場はどんな世界でしたか。恐ろしく長い時間、しかもまともに仕事を教えてくれることもなく、責任だけは重く大きく、身体も心もボロボロになって辞めていく仲間が少なくありません。そんな姿をみて「働く」ことに不安を感じたり、自信を失い、できることなら「働く」ことをもう少しあとにしたいと思う人や、どこでもいい、どんな仕事でもいい、とにかく就職しないと生きていけないと仕事を探している人もいるでしょう。みなさんは「働く」ことをいまどう考えていますか。

次回は、「働く」ことがつらく苦しくなっている、原因を考えてみましょう。(つづく)

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■働きがいを奪うもの■

■社会のしくみと働くこと

人間が生きるための条件はなんでしょう。まずは「食べるもの」ですね。そして衣や住。なぜか日本では昔から順序が衣食住ですが、こうした生活手段なしには人間は生きていけません。

動物も生きるために必要なものを獲得するために活動していますが、人間は衣食住などの生活手段を「労働」、つまり「働くこと」で獲得してきました。

サルの群れに別れを告げて、地上の降り立ち二本足で歩きはじめた人間は、「手」を使って自然に働きかけ、集団の力で厳しい自然とたたかい生きてきました。集団労働のなかで合図の必要から言語とそれによる「考える力」(理性)を獲得し、自然の法則を認識し、道具の制作のなかで「かたち」へのこだわりから美的感情を豊かにし、理性や感性を培い、長い歴史のなかで科学や芸術を発展させ、「人間らしさ」を身につけてきました。

原始時代の人間は、集団で労働しその成果を平等に分配していたのでしょう。氏族ごとの対立はあっても同じ集団のなかでは対立した人間関係はなかったようです。ところがやがて生産力の発展にともなって、他人の労働の成果を搾取することが可能になり、奴隷制、封建制と社会のしくみが変化・発展し、今日の資本主義社会となりました。

資本主義社会では、労働者が労働によって生みだした成果の多くを、資本家が搾取しています。他社との競争に勝つために、資本家は「もうけ」が第一の目標となり、労働者を長時間・過密で働かせ、賃金を抑え、労働者の「働きがい」を奪い、ときには「命」まで奪うのです。

■利潤最優先の働かせ方

働くことには独特のおもしろさがあります。会社は、労働者の「やる気」を引きだしうまく利用します。いま日本中でひろがっているのが、成果主義賃金です。「成果に応じてたくさん賃金を払うからがんばりなさい」とあおるのです。「労働の成果」などどうしてはかるのでしょう。お金で勘定できるものではありません。本来賃金は「生活費」が原則で、先輩たちは人間らしく生活できる賃金を要求してたたかってきました。ところがその原則をふみにじり上司の勝手な判断で「成果」をきめ賃金を支払うシステムがひろがり、いま労働者どうしが苛酷な競争のなかで、心も体も破壊されつつあります。

また労働者を正規雇用せず、パート・アルバイト・派遣・請負・臨時・非常勤など非正規で雇い、きわめて低い賃金で無権利な労働条件で働かせ、大きな利益を得ています。

過労死で夫を失った方が、働きすぎる息子に「お願いだからムリをしないで」というと、「お母さん、会社を辞めろというのか」と答えました。みなさんはどう思いますか。

この社会のしくみのなかで、どうしたら人間らしく働き生きることができるのでしょう。(つづく)

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■人間らしく働き、生きるためのルール■

■たたかいでつくられたルール

憲法はもともと権力を規制し、国民を励ます力をもっています。人類は長い歴史のなかでたたかって人間らしく生きる権利をかちとってきました。日本国憲法には、その人類の成果が凝縮しています。27条をみると、国民に働く権利があり、賃金や時間、休息などの労働条件の基準は法律で定めると明記してあります。基準を定めた法律が労働基準法で、そこには不十分ではありますが人として値する「働き方」のルールがしめされています。

たとえば、1日の労働時間は8時間で、それを超えると25%の割増賃金、夜の10時を超えたらさらに25%、つまり5割増、休日労働には35%の割増賃金を払うことを雇い主に義務づけています。この当たり前の「ルール」も世界の労働者が長い長いたたかいのなかでかちとったものです。ところで私たちは資本主義という利潤最優先の社会で働き、生きています。資本家はもうけのためにはこのルールに違反して、死ぬほど働かせます。だから憲法はルールを守らせるために28条で、労働者が団結して労働組合をつくり、雇い主と交渉し、要求実現のためにはストライキなどの行動に立ち上がることを無条件に保障しています(残念ながら現在アメリカの圧力で公務員などのたたかう権利が制限)。

先輩たちはたたかってルールをつくり、そのルールを力に、またたたかい、働き生きる権利を一つひとつ拡大してきました。

■ルールを守らせると…

5月に北欧を旅してきました。労働者の9割近くが労働組合に加盟し、ルールを守らせています。週2日は休みで、一日の労働時間は厳しく守られ、夕方には家族そろっての夕食が当たり前、有給休暇は5週間もありほとんどの人がちゃんと権利を行使しています。

みなさん、想像できますか。ルールを守らせれば人間らしく働き生きることができるのですね。日本でも、8時間を厳しく守らせたら、家族や友人との自由な時間が実現し、子どもたちはおおよろこび。いままでムリをしてやらされていた「過剰な仕事」は他の人に、そこで雇用が拡大すれば一石二鳥ですね。心も体も元気になり仕事の質も上がるでしょう。

現実の日本はたいへんです。三菱につづいてトヨタ自動車も欠陥を知りながら改善措置をとらずに放置していたことが発覚しました。恐ろしいことです。「稼ぐ」が第一目標だったJR西日本の脱線事故などルールを守らず「働くこと」をゆがめてしまった日本は、労働者・国民に不幸をもたらすだけでなく、いまや国際社会でも大きく信頼を失いつつあり、企業の社会的責任が問われています。

政府・財界はこの現実を反省するどころか、いまの「働くルール」さえも奪うことを企んでいます。(つづく)

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■学んで元気、働きがいある職場と社会を■

■学ぶことの大切さ

「働くってなんだろう」。この根源的な問いは、とっても大切です。働くことに悩み、苦しみ、考えている人は、健全です。いまの24歳以下の若者の半数が非正規雇用で、正規雇用の人も長時間・過密の最悪の条件で働かされています。働くことに疑問を抱き、不安や怒りをもって当然です。その若者たちがたたかいに立ち上がるとき、日本の歴史はうごきます。職場も社会もかならずかわります。たたかわなければ、もっと悪くなります。不満や怒りだけではたたかいに勝てません。たたかうためには知識がいります。組織もいります。いまの若者は学ぶことや組織がきらいだと思われていますが、そんなことはありません。学べばだれと手をつなぎ、だれとたたかうかが見えてきます。学ぶことが楽しくなります。ただ身近なところに「組織」がないか、あっても気がつかないだけです。読者のみなさんには、「民青同盟」という組織があります。学ぶときにもたたかうときにもしっかり支えてくれます。

怒っていても、どうしていいのかわからない人は、「結局自分の努力が足らないから」とあきらめてしまうのでしょう。これでは政府・財界の政策(非正規・無権利の労働者をふやし、財界の利益がふえる)の思うツボです。

公務員の職場にもどんどんアルバイト・パートがふえ、派遣労働者もいっぱいいます。正規の公務員労働者に少ない人数で重い責任が課せられ、成績主義ももち込まれました。民営化されたところは利用者へのサービスは二の次で利潤最優先、いま「官」「民」問わずたいへんです。空前の利益でうるおう大企業では労働組合が抑えられ「管理」され、中小企業では産業「空洞化」で仕事はへり、あっても大企業の横暴で低い単価で赤字経営。知識や技術をもつ優れた労働者の働く条件を改善する力を奪われています。小泉「構造改革」で予算がバッサリ削られた医療・福祉・教育の分野では、経営もたいへんで労働者の働きがいが奪われています。どこで、どんな仕事で働いても、この「搾取のしくみ」からはのがれられません。みなさんの尊い労働の成果が日本とアメリカの財閥に吸い上げられているのですね。

■搾取もなく働きがいのある未来

どんな職場で働こうと、怒りの「爆発」がかならずきます。問題はその場に、たしかな組織と知識に支えられて生きる仲間がいるかどうかです。読者のみなさんの存在は、はかりしれない大きな意味があります。「人間らしく働きたい」という仲間の願いを一つに一歩踏みだすチャンスです。資本主義をのりこえた未来社会は、主な生産手段が国民のものになり、搾取も抑圧もない社会です。労働時間も大幅に短縮され、文化・芸術・スポーツが楽しめ、人間発達の可能性が大きくひろがる社会です。それは「働くこと」がそのまま「人間らしく」なる社会です。そんなすてきな未来にむかって一つひとつ小さな要求の実現をかちとり、社会を大きくかえる基盤をしっかりきずいていきましょう。

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