試し読み-増えるシリア難民 解決の道は?(1月25日付)

増えるシリア難民 解決の道は?
シリアでは、反政府派と政府軍による内戦の激化とともに、過激組織ISが支配地域を広め、それに対する欧米諸国などの空爆が行われたことなどにより、混乱が続いています。難民が生まれる背景は何か、増え続ける難民へどのような支援が求められているのか考えます。

▲日本のシリア難民の受け入れ人数を知り、「少な過ぎる」と話す女性(大学4年)(14日、渋谷)

難民増加なぜ
シリアの難民問題について渋谷の街頭で取材すると「なぜ難民が生まれているのかよく知らない」という声が出されました。
シリアでは2011年から難民が増え続けています。2200万人の人口のうち半数以上が避難民や難民になっています。11年以降、中東や北アフリカで大きな政治変動が起こりました。「アラブの春」と呼ばれる、それまで続いていた独裁政権に対しての抗議デモなど民主化を求めた市民のたたかいです。チュニジアやエジプトでは大統領を退陣にまで追い込みました。
シリアでもアサド政権に対する民衆の大規模なデモが行われるようになりました。これに対してアサド政権はデモ隊への発砲など激しい弾圧を行いました。米国やヨーロッパ諸国、中東の周辺国は自分たちの都合のよい反政府派に対して武器を供与するなどして支援したことが、政府軍と反政府派との間で内戦の激化と長期化を招いています。内戦の混乱に乗じ、支配地域の拡大を狙うISがイラクから流入。ISに対する米国などの空爆が加わりシリア国内は混迷を深め、家を失うなど多くの避難民や難民を生み出しました。

 

少ない受け入れ人数
中東地図アウトトルコやレバノン、イラク、エジプトなど周辺国や欧米諸国に逃れたシリア難民は約440万人に上り、760万人が国内避難民として暮らしています。ヨーロッパに逃れるために、地中海をボートで渡る危険な航海で3千人が命を落としています。昨年9月、トルコのボドルムという町の砂浜に溺死したシリアの男の子が打ち上げられ、その写真は世界中に衝撃を与えました。このことをきっかけにイギリスやドイツが難民の受け入れ拡大を表明しました。
日本にも14年だけで5千人の難民申請がありました。しかし、難民として受け入れが決まったのは11人。そのうちシリア人は3人でした。渋谷で取材した女性(大学4年)は日本の難民受け入れの人数について「極端に少ないと思う。もっと増やすべきだし、受け入れ人数が増えたら日本でも難民問題への関心を高めることにつながると思う」と話します。
「難民の地位に関する条約」(1951年)は難民を「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有すること」などと定義しています。日本では難民に該当するか否かの判断は入国管理局が担っています。ヨーロッパ諸国では、一般の外国人などの出入国に関する審査と難民の審査機関は分かれており、後者はより人道的な観点から判断がなされます。そういった体制の違いが日本の難民受け入れが進まない一つの要因といえます。
国連難民高等弁務官事務所は第三国定住を推奨しています。難民キャンプなどで過ごしている難民を第三国が受け入れ、庇護や滞在の権利を与えるというものです。すでに審査し認定されてキャンプで生活している難民のため、第三国が煩雑な審査をくり返す必要はありません。外務省のホームページによると日本は第三国定住について、難民問題の解決策の一つで「国際貢献及び人道支援の観点」として今までも実施してきました。シリア難民においても第三国定住を実施することは難しくないといわれています。日本は人道的な観点から難民の受け入れを検討する必要があります。

 

9条持つ国として
難民問題の根本解決として国際社会が結束して紛争を終わらせる努力が不可欠です。昨年11月14日、ウィーンで開かれていた日本を含むシリア和平のための関係国会合で、停戦合意と政権移行への選挙を実施する大筋合意が行われたと報道されました。国連安全保障理事会は12月18日、ウィーンでの会議を受け、シリア内戦の終結に向け、同国政府と反政府勢力による公式の交渉を国連の仲介で今年1月に実施するよう求める決議を全会一致で採択しました。潘基文国連事務総長は「内戦解決への政治的道筋に焦点を当てた最初の決議。われわれはこの重要な前進に依拠しなければならない」と語りました。
各国がシリア内戦の終結に向けての政治的プロセスの重要性を強調しています。米国などはISの支配地域の拡大阻止を理由にシリアに空爆を行っています。今の日本には米国からISへの空爆などの軍事協力要請があった場合、参加が可能になる戦争法があります。昨年12月10日の参院内閣委員会で、日本共産党の山下芳生参議院議員が米軍からのISに対する空爆への支援要請があった場合に断れるかどうかを政府に迫りました。菅義偉官房長官は「政府として(IS)軍事作戦への後方支援はまったく考えていない」とく
り返すだけで、断るとは最後まで断言しませんでした。渋谷の女性は「海外で武力行使ができる戦争法も怖いし、空爆に加わることで日本がテロの標的になるんじゃないかと不安に思う」と話します。
シリアの紛争と難民問題は軍事介入では解決するどころか新たな悲劇を招きかねません。憲法9条を持つ国として医療や教育分野での支援、紛争の平和的解決の道に進むよう外交的イニシアチブを発揮することこそ、日本に求められています。