試し読み-日韓合意 真の解決の出発点に(2月8日付)

日本軍「慰安婦」問題 日韓合意 真の解決の出発点に
昨年12月28日、岸田文雄外相と韓国の尹炳世外相はソウルの韓国外務省で会談し、両政府の懸案であった日本軍「慰安婦」問題の解決に関して合意に達したと発表しました。今回の「合意」ではどのような解決が探られているのでしょうか。街の青年の受け止めを聞き、問題解決の展望を考えます。    (本文は一部仮名)

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「慰安婦」問題解決に向けて毎週行われる「水曜デモ」は1200回を超える(2013年3月6日、韓国・ソウル)

 「軍の関与」認め 「責任を痛感」
渋谷の街頭では今回の「合意」を受けて、「(政治でも)仲良くしてほしい」(高校2年、女性)など、日本と韓国の関係改善を求める声が聞かれました。安倍政権は発足当初から侵略戦争を肯定する靖国神社を参拝するなど、日韓の外交関係を悪化させ、昨年11月に日韓首脳会談が行われるまで4年もの間、首脳会談を開けていませんでした。
「合意」が進んだ背景に韓国の憲法裁判所が2011年、韓国政府が「慰安婦」問題の具体的解決のために努力していないことについて違憲判決を下したことがあります。これを受け韓国は日本に政府間交渉を求めていました。
岸田外相は、日本軍「慰安婦」問題について、「軍の関与の下に」「多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた問題」と認め、「責任を痛感している」と表明。安倍首相は「心からおわびと反省の気持ちを表明する」としました(左図)。その上で韓国政府が元「慰安婦」支援のために設立する財団に日本政府が予算を出し、「全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業」を行うと発表。
「合意」の一節は、「軍の関与」や「強制性」を認めた「河野談話」とほぼ同じです。安倍政権は「河野談話」の見直しを主張し、戦後70年の「安倍談話」でも「慰安婦」に言及しないなど加害の事実に背を向けてきました。問題解決を求める国内外の世論に押され、「河野談話」に示された事実をあらためて確認したことは重要です。

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解決の責任は日本政府に
韓国では「合意」はどう受け止められているでしょうか。韓国の民間世論調査機関「リアルメーター」が昨年12月31日に発表した調査では、「合意」が「正しい」と評価する人が43・2%に対し、「誤り」は50・7%に上りました。元「慰安婦」被害者の中には「合意」について事前に説明がなく、当事者抜きの協議だと非難する人もいます。
渋谷で取材に応えた女性(大学3年)は「合意イコール解決ではないと思う」と話します。問題を解決するために、被害者の名誉回復等の措置を行う主体は日本政府です。「合意」を出発点に、被害者や韓国市民に受け入れられるとりくみを進める必要があります。
土台となるのは「河野談話」や被害者が賠償を求めた裁判で認定された「慰安婦」の強制性の事実や、「性奴隷」というべき悲惨な実態を認め日本政府の公式の立場として表明することです。その事実認定の上に、国会や閣議決定など翻すことのできない場で、被害者の求める謝罪と賠償を行う必要があります。安倍首相は「河野談話」を受け継ぐと表明しており、「責任を痛感する」としているその事実を明確にしなければなりません。
当事者の反発を強めているのは、今回の「合意」を「最終的かつ不可逆的」な解決としている点です。日韓両政府の名誉回復措置が実施されることを前提として、今後「国際社会において」「互いに非難・批判することは控える」ことを求めています。本吉美香さん(大学1年)は「後戻りできないというなら、被害者やその遺族と話し合って決めるべき」と言います。公人の歴史をゆがめる発言について、「反論をちゃんとしてほしい。蒸し返さないと求めるなら、なおさら謝罪をして、誠意を表してほしい」と話します。日本政府は「合意」を実現するために、「強制連行はなかった」「性奴隷ではない」という歴史をねじ曲げる公人の発言に反論し、「慰安婦」問題を解決する意思と行動を国内外に示し続けることが求められます。

尊厳回復するとりくみを
「河野談話」は真相究明や歴史教育を通じて再発防止にとりくむことを表明しています。軍が主体として慰安所を企画・立案したことなど、「河野談話」後に明らかとなっている歴史研究の成果をきちんと認定し、歴史教科書に記載し伝えていくことが求められています。本吉さんは、「慰安婦」などの記述が歴史教科書から削除された問題を挙げ、「事実を隠蔽するのは良くない。日本にとって悪いことでも、事実を伝えていかないといけない」と話します。
韓国政府に登録されている元「慰安婦」238人のうち、すでに192人が亡くなり、生存している人も平均年齢が89歳と高齢です。「慰安婦」問題は、日本政府が責任を行動で示し、被害者自身がそれを受け止めることが解決の前提です。被害者の頭越しの政治・外交問題としてではなく、傷つけられた人権を社会的に回復する、人間としての尊厳が回復されるとりくみが急務です。