試し読み-介護現場で起こるひずみ(3月21日付)

介護現場で起こるひずみ 公的援助強めよ
若い世代が多く従事する介護の現場。そこでは、慢性的な人手不足と職員の過酷な労働や介護報酬引き下げによる事業所の相次ぐ廃業など、深刻な状況が起こっています。介護現場の改善に向けて何が求められているかを考えます。(文中は仮名)

「介護職員等の処遇改善法案」を向大野衆院事務総長(中央)に提出する(左から)山井、吉川、初鹿、中島、(一人おいて)泉、井坂、高橋、玉城の各議員(2日、国会内、しんぶん赤旗提供)

「介護職員等の処遇改善法案」を向大野衆院事務総長(中央)に提出する(左から)山井、吉川、初鹿、中島、(一人おいて)泉、井坂、高橋、玉城の各議員(2日、国会内、しんぶん赤旗提供)

 

虐待の件数過去最多
神奈川県川崎市の有料老人ホームで入居者3人が相次いで転落死した事件で当時の職員が殺人の容疑で逮捕され、それ以前にも職員による虐待があったことが明らかになり、青年の間に衝撃が走っています。渋谷で取材に応じた女性(大学4年)は「悲しいニュースに心が痛んだ」と言います。元職員の犯行が事実だとすれば、どんな理由があろうと許されませんが、事件を防ぐことはできなかったのか、施設の運営や行政の対策はどうだったのかなど、真相を全面的に明らかにすることが必要です。
グラフ改 今回起きたおぞましい事件は特殊な事例ということでは片付けられません。厚生労働省の調査では、老人ホームなど養介護施設の従事者による高齢者の虐待件数は2014年度で300件に上り、過去最多を更新しています。虐待の要因として関係者が指摘するのは、「人手不足による疲れやストレス」と「教育・知識・介護技術などの不足」です。介護労働安定センターが行った実態調査(14年度)では、介護職員の勤続年数は5年未満が6割以上で、経験が浅い職員の割合や離職率が高いことがうかがえます。慢性的な人手不足と、十分な教育・育成体制が成り立たない現状があるのです。

「介護離職ゼロ」といいながら連続改悪
家族などの介護のために仕事を辞める介護離職者の増加も問題です。その数は毎年10万人にも上ります(総務省の就業構造基本調査)。安倍晋三内閣は「一億総活躍社会」の緊急対策として「介護離職ゼロ」を掲げ、「特別養護老人ホーム待機者の解消」のため、2020年代初頭までに整備目標を50万人分拡大するとしました。しかし今ある計画の38万人に12万人を上積みしたにとどまり、今後も大幅に増え続ける要介護者のニーズには程遠い政策です。街頭の青年は「介護施設を造ることは大切だと思うけど、これまでもあまり進んでいないように感じる」(女性、22歳、大学院生)と言います。
「『介護離職ゼロ』と言うなら、介護報酬の引き上げが必要」と話すのは、介護士の山田大樹さん(33)。安倍内閣は「介護離職ゼロ」を掲げる一方、公的介護サービスの対価として事業所や施設に支払われる介護報酬の2・27%という過去最大規模の引き下げを強行しました。その結果、毎日新聞が九州・沖縄・山口で行った調査(15年度)で分かっただけでも、経営が成り立たなくなった事業所288件が閉鎖や休止に追い込まれるなど、介護労働者、利用者、家族の願いとは逆行した事態を招いています。「(介護報酬の)マイナス改定が許せない」と話す山田さんが働く事業所では、退職者が続き常に欠員状態で残業時間も増えているといいます。寝たきりだった利用者がリハビリを通じて歩けるようになり、家族にも感謝されたことを経験し自身の仕事の役割とやりがいを実感している山田さん。「安倍政権は言っていることとやっていることが真逆」と批判します。
その上政府は、介護サービスをさらに受けにくくする制度改悪まで準備しています。介護保険は、利用者の要介護度を認定し、それに応じてサービス内容が決まりますが、政府は、「要介護1・2」について、ヘルパーが調理や買い物を支援する「生活援助」を保険から外し、費用の全額を利用者に払わせることを検討しています。この問題について日本共産党の小池晃参議院議員は3日、予算委員会で質問に立ち、「『介護離職ゼロ』に逆行する」と指摘。ヘルパーの援助が、利用者の体調管理や認知症の把握に重要な役割を果たしていることを示し、「生活援助」を打ち切れば、家族が苦しむことを明らかにして、政府に改悪案の撤回を迫りました。

健康と命、尊厳守る社会的仕事
介護従事者が介護の職を選んだ理由は「働きがいのある仕事だと思ったから(52・6%)」(介護労働安定センター14年度「介護労働実態調査」)がトップです。介護職は人の健康と命、尊厳を守る仕事です。しかし、全産業の月額平均賃金33万3千円に対し、ホームヘルパー22万5千円、福祉施設介護員22万3千円と約10万円も低い賃金です。介護職の賃金や介護報酬を上げるなどして働く環境が改善されれば、より良い介護になるのは明瞭です。
日本共産党、民主党、維新の党、生活の党、社民党の5野党は2日、共同で「介護職員等の処遇改善法案」を提出しました。同法案は、介護報酬とは別に、賃金改善にとりくむ事業所に公費で助成金を支給し、月額6千~1万円の賃金アップを図るものです。
日本共産党は独自に、削減された介護報酬を元に戻し、公費による賃金アップをさらに拡充して、介護労働者の抜本的な待遇の改善を図ることを提案しています。その財源は消費税に頼らず、大企業や富裕層に応分の負担を求め、公共事業や軍事費の無駄をなくす税・財政の改革で捻出するというのが、日本共産党の提案です。
社会保障費の削減、自己負担の引き上げを行うなど介護現場に痛みを押し付けるのではなく、介護従事者や利用者とその家族が安心して過ごせる介護の土台を築くための政治への転換が急務です。