試し読み-ノーモア! ブラック企業 ブラックバイト(4月4日付)

組合で職場に権利を 政治で資本に規制を 

ノーモア! ブラック企業 ブラックバイト

青年を使い捨てにする「ブラック企業」「ブラックバイト」を規制し根絶する動きが広がっています。首都圏青年ユニオンや民青同盟が呼びかけた、あらゆる違法な賃金の搾取の根絶を目指す「NO MORE 賃金泥棒」プロジェクトがとりくまれる中、労働組合に入り団体交渉に踏み出した青年や、デモや街頭宣伝で声を上げる青年に思いを聞きました。    (文中は一部仮名、日隈広志記者)

組合員と団交の打ち合わせをする神部さん(3月24日、東京)

組合員と団交の打ち合わせをする神部さん(3月24日、東京)

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エキタスの街頭宣伝。プラカードの意味は「戦争でなく生活のためにお金を使え」(3月20日、東京)

尊厳壊す違法な労働
「『ブラックバイト』でまさか自分が働くとは」―。こう話すのは神奈川の遠山遥香さん(大学2年)です。昨年4月に働き始めた個人経営の居酒屋では、雇用契約書がなく、賃金は15分単位で計算され、15分に満たない場合は切り捨てられていました。時給850円は神奈川の最低賃金時給890円(2015年度)を下回っていました。一人暮らしで仕送りはなく、奨学金を借りましたが節約のために「よく絶食して、定期的に熱が出て寝込んでいた」と言います。午後6時半からの仕事は「退勤が午前2時を過ぎることもあった」と言う遠山さんは同年秋、アルバイトを辞めました。
「ブラック企業」「ブラックバイト」は働く人の立場を尊重せず過酷な働き方を強いる企業やアルバイトのことです。最賃を下回る時給や1分単位での賃金計算がなされないことは違法行為です。
「地元の最賃に比べ850円は断然高かった」と言う遠山さんは自身の時給が神奈川の最賃以下だと民青の班会で知り、「だまされてた」と怒りが湧いたといいます。「給料と最賃の差額分は取り戻せる」とも聞き喜びましたが、「どうしていいか分からなかった」とふり返ります。アルバイトの先輩とは「ここブラックだね」と言い合いつつ、「こうしないと店が回らない」「ずっと働くわけじゃないから我慢する」などと言われ、「バイトだから仕方ない」と思っていました。
変化のきっかけは1月、所属する大学サークルの学習会で招いた労働組合・首都圏青年ユニオンの神部紅委員長からアルバイトの権利を学んだことでした。給料と最賃の差額分の賃金が「心残りだった」と言う遠山さんは、神部さんから「組合に入り団体交渉することが一番」と勧められ、青年ユニオンに加入。不払い賃金の支払いなどを求めて団体交渉に立ち上がりました。

団交で職場の主権者に
3月15日、遠山さんは神部さんらと共に▼不払い賃金の支払い▼着替えなど業務準備時間への賃金支払い▼1分単位での賃金計算の見直し―などの改善を全社的に求めて団体交渉。店側は全面的に非を認め、遠山さんとユニオンが求める賃金を全て認め、全社的な改善を約束しました。遠山さんは「個人ではあきらめていたかもしれない。不払い賃金の支払いを確約できて良かった」と話します。
団交前をふり返り、遠山さんは「班会ではよく『対等な人間関係が大事』と言うのに、職場で意見が言えない自分が嫌だった」と言います。団交中、店側から「あいさつが一向にできない」「成長が見られなかった」などと暴言を浴びせられ、「職場同様に怒鳴る店長や社長が怖くて、相手の顔を見られなかった」「『団交しなければ良かった』という考えもよぎった」と遠山さん。しかし神部さんが法律と事実に基づき店側の暴言や違法を正し追い詰める姿を目の当たりにし、「心強くて、『私は悪くない』と思えた。バイトでも経営者と対等なんだと身をもって学べた」と話します。
遠山さんは「組合の人や民青の仲間に支えられて勇気を出せた」と話します。青年ユニオンに誘われた時、遠山さんは「自信が持てない」と迷いましたが、組合員の同盟員から「一緒にがんばろう」と言われ、「一人じゃないと思えた」と加入を決意。団交後、参加した組合員らから「がんばったね」「すごかったよ」と声をかけられ、遠山さんは「ほっとして泣きそうだった。一緒に『おかしい』と言える仲間がいる安心感でいっぱいだった」と話します。
遠山さんは「自分だけでなく会社全体が改善に動いている。私の行動が会社も変えようとしているのがすごい」と言います。労働者がたたかって権利を獲得してきた歴史に触れ、「他の人もきっと怖くて、でも仲間や学びに励まされながら交渉してきたと思う。『積み重ねで社会は変わる』ってこういうことかと思った」と遠山さん。「友だちが困ったときに、理論と自分の経験を話して『おかしい、変えよう』って伝えたい」    (2面につづく)

~社会の荒廃防ぎ公正もたらす労働組合~
首都圏青年ユニオン委員長 神部紅さん
「ブラックバイト」や「ブラック企業」は働く人々の心身・生命をむしばむだけでなく、その会社のサービスや商品を買う消費者、産業、地域社会をも荒廃させます。牛丼「すきや」を経営する企業ゼンショーでは、注文や会計など店の仕事全てを従業員一人に押し付ける「ワンオペ」が横行し、深夜帯に強盗が多発する事態にまで至りました。企業のもうけ追求が地域の治安を悪化させたのです。労働組合に入り、自分の命や権利を守ることは、業界や企業の暴走を止め、社会の荒廃を防ぐことにつながるのです。
働くとは本来、何かを生み出し、工夫を加え発展させていく創造的な営みです。より良い職場で働き創造性を発揮したい、もっと社会のために役立てたいとは誰もが持つであろう真っ当な願いです。現在の労使関係の下でそれを実現するには労働組合で権利を行使していく他ありません。権利や人権は行使することでより高い水準を勝ち取ることができ、より良い社会へと進むことができます。労働組合は権利の行使によって、正義や公正さを社会にもたらす存在です。ぜひ皆さんも労働組合に加入し一緒に権利を行使しましょう。