試し読み-高浜原発指し止め判決(4月4日付)

高浜原発差し止め判決 「安全神話」復活許さず

滋賀・大津地方裁判所は3月9日、福井・高浜原発3・4号機(関西電力)の運転を禁止する仮処分決定を出しました。稼働している原発を止める判決は史上初めてで画期的なことです。判決の意義を考えます。

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新潟出身で実家が柏崎刈羽原発の近くにあるという男性(25)は「住民の不安に共感する」と話す(渋谷、3月18日)

住民の声届いた画期的な判決
高浜原発3・4号機は、原子力規制委員会(規制委)の「新規制基準」による審査を通過し、3号機が1月29日、4号機は2月26日に再稼働されていました。4号機は稼働後わずか3日でトラブルにより緊急停止し、今回の判決を受け2機が共に停止したことになります。
渋谷の街頭では今回の判決を受け、「再稼働は良くない。国民の声が届いて中止になった。声を出すことが大事で、止められるんだと思えた」(22歳、女性)という声が聞かれました。
裁判は、高浜原発を含めて13基が林立する福井・若狭湾の原発が、地震や津波によってメルトダウン(炉心溶融)などの過酷事故を起こした場合、関西圏の飲料水の水源である琵琶湖が汚染され、広範囲に被害が及ぶとして、「命と琵琶湖を守ろう」と滋賀県民29人が訴えました。原発の隣接県住民のうったえを隣接県の裁判所が認めたことも、全国に広がる同種の裁判を後押しするものです。

事故教訓にしない無責任を糾弾
規制委の「新基準」を通過して再稼働した原発の停止を命じた判決はおととし年4月の福井地裁決定に続き2回目で、そのどちらも高浜3・4号機に対してです。今回の判決では、「『基準』に適合した」というだけでなく、福島第1原発事故の教訓を踏まえ規制がどう強化され、どう対応したのかを立証する責任を関西電力に求めました。
最大の問題点は、関電が高浜原発を襲うと想定される最大の地震動(基準地震動)を700ガルと設定し、各施設の耐震設計の基準としたことです。この基準地震動は、過去の地震の平均値から導いたものであり、過去最大の地震動を想定すべきだという住民側の訴えを受け、判決は関電の証明を不十分だと断じました。加えて、過酷事故や津波対策などで「人格権が侵害されるおそれが高いにも関わらず」、関電の説明が十分でないとして運転停止の必要性を認めています。
判決は「福島第一原子力発電所事故の原因究明は、建屋内での調査が進んでおらず、今なお道半ば」として、「災禍の甚大さに真摯に向き合い」、再発防止のために「原因究明を徹底的に行うことが不可欠」と指摘。関電の説明不足だけでなく、規制委の姿勢や「新基準」そのものに「非常に不安を覚えるものといわざるを得ない」と疑問を呈しています。
判決では「新基準」の具体的な問題点として「避難計画」を挙げています。原発から30キロ圏内の自治体に避難計画が義務付けられていますが、規制委の審査の対象にはなっていません。判決は福島の事故による広範囲の影響や避難の大きな混乱を経験した国民の不安に応えるために、国家主導で避難計画を策定する必要があり、避難計画を含めた規制基準を「策定すべき信義則上の義務が国家には発生している」と述べています。
街頭で取材に応じた男性(大学3年)は避難計画の審査が義務付けられていないことについて、「避難計画は必要。事故が起きる前に最善を尽くすべきで、(国は)責任を果たしていないと思う」と話します。

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判決力に原発ゼロの社会へ
東日本大震災・原発事故以降、原発の運転差し止めを命じる決定は3件目です。世論調査では再稼働反対の声が5~6割を超え、国会前や全国で反原発運動が広がるなど、国民の認識の変化・原発への不安に応えた判決となりました。
再稼働を進める政府・電力会社側は経済性や温暖化対策などをその理由に挙げています。しかし判決では一度でも事故が起きたら巨額の費用が掛かり、環境への影響は国境すら超えることを挙げ「発電の効率性をもって、これらの甚大な災禍と引き換えにすべき事情」はないと厳しく断じています。また、「3・11」以降2度にわたり、節電などの努力で原発ゼロの期間を実現させ、CO2の排出も抑制してきた国民的経験と認識の発展も判決を支えています。街頭の青年からは、「(原発ゼロで)やっていけるのなら安全な方がいい。家の近くにあったら事故が起きるかもしれないから嫌だ」(高校2年、男性)「電気代よりも人の命や安全性が大事」(22歳、女性)という声が出されました。
安倍首相は判決を受け、「規制基準に『適合』すると判断した原発を再稼働させる方針に変わりはない」などと発言し、国民の声に背を向けています。
今回の判決は「新基準」に「適合」したから安全という新たな「安全神話」を許さず、福島第1原発事故の教訓を反映しない「新基準」そのものへ根本的な疑問を投げかけるものです。司法の重大な判断、国民の願いに応えて、原発ゼロの社会へ舵を取ることが政治に求められています。