「パナマ文書」問題 税金逃れ許さない規制を

「パナマ文書」問題 税金逃れ許さない規制を
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)をはじめとする世界各国の報道機関は4月3日、パナマの法律事務所から流出した機密文書(「パナマ文書」)の一部を公開・報道しました。多国籍企業や富裕層がタックスヘイブン(租税回避地)を利用して巨額の課税逃れを行っている実態が暴露され、世界中で批判が強まっています。

大学1年の女性は「架空の会社の取り締まりは必要だと思う」とタックスヘイブンを利用した課税逃れを批判(11日、渋谷)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界に衝撃を与えた「パナマ文書」
タックスヘイブンとは法人税や所得税などがかからないか国際的に見て税率が極めて低い国や地域のことです。多国籍企業や富裕層がタックスヘイブンに名前だけの会社(ペーパーカンパニー)を設立し巨額の課税逃れを行っており、タックスヘイブンに隠されている資産額は日本の国家予算のおよそ30倍に当たる3000兆円ともいわれています。またマネーロンダリング(資金洗浄)など犯罪行為の温床になっていることでも問題視されています。
「パナマ文書」では世界的な大企業や富裕層、政治家などが約21万4000のペーパーカンパニーの設立に関わっていたことが明らかになりました。4月に文書の存在が初めて公表されて以降、批判が強まっており、アイスランドのグンロイグソン首相が辞任するなど世界中に衝撃を与えています。5月10日には「パナマ文書」に記載されていたペーパーカンパニーの情報が公開されました。その中には日本の企業や大企業経営者の名前も含まれています。国際決済銀行(BIS)によると昨年12月末時点でタックスヘイブンのケイマン諸島に日本企業が保有している投資残高は約63兆円にも上ります。日本においても、タックスヘイブンを利用した巨額の課税逃れが横行し、国家財政を脅かす事態となっています。

 

課税逃れで庶民にしわ寄せ
パナマ文書_図版_アウト国際協力団体オックスファムによると、タックスヘイブンを利用して富裕層や多国籍企業が課税逃れをすることによって各国政府が本来得られるはずの税収入が失われているといいます。これは先進国だけの問題ではなく、途上国だけでも年間1700億ドル(およそ18兆円)の税収入を失っており、これだけの財源があれば保健サービスの拡充などを通じて1億5000万人の子どもたちの命が救えるとしています。行き過ぎた課税逃れによって、教育・医療・福祉など本来受けられるはずの公的サービスなどが必要とされている人々に行き届かないという状況が生まれています。渋谷での取材では、「学費はなかったらいいなと思う。大企業や富裕層にもうちょっと税金を払ってもらうことで学費負担が軽くなるならそうなってほしい」(大学1年、女性)など、大企業や富裕層の課税逃れによって庶民の負担が増えていることへの批判の声が寄せられました。

国際社会が協調して規制を
タックスヘイブンを利用した課税逃れへの批判に対し、利用している富裕層や大企業は「合法的に処理している」などと合理化していますが、大多数の人が従わなければならない法的責任を大企業や富裕層があらゆる手段を使って回避しているという不公平さが問題です。
税金はそれぞれの企業や個人がその所得や資産に応じた額を納めるべきで、大企業や富裕層による巨額の課税逃れが横行する下では国の財政が成り立たず、庶民や中小企業にそのしわ寄せが向かうことになります。OECDの「税収統計2015年版」は、OECD加盟国全体で経済危機以降、法人税収が減少しており、そのことによって個人納税者への負担が一層高まっていることを明らかにしています。OECDのパスカル・サンタマン税制センター長は、法人納税者が納税額を少なくする方法を模索する一方で、個人がその分の負担を強いられているといいます。渋谷の取材では「ひきょうですよね。お金があるんだったら払えばいいのに」(19歳、女性)「もうけたらもうけた分だけ税金を払うようなしくみになったらいいと思う。一般市民は普通に払っている」(26歳、女性)などの声が出されました。こうした国民の声に応え、法の抜け道をふさぎ適切な課税がなされるよう国際社会が協調して課税逃れを取り締まる国際ルールづくりが求められています。