電力・エネルギー問題 「原発ゼロ」で再生エネ増やせ

政府は今年5月、今夏の企業や家庭への「節電要請」を見送ると決めました。東日本大震災以降、初めてです。参院選挙の福島選挙区では原発に固執する安倍政権の閣僚に野党統一候補が勝利し、安倍政権に痛打を与えました。「原発ゼロ」をめぐり安倍政権と国民の世論がせめぎ合っています。

「安全なエネルギーがいい」と言う大学1年の男性(7月19日、渋谷)

「安全なエネルギーがいい」と言う大学1年の男性(7月19日、渋谷)

福島の事故終わっていない
政府の「節電要請」の見送りの背景には2011年3月の東京電力福島第1原発事故以降の企業や家庭の節電のとりくみが進んだことがあります。事故前、全国の原発54基が稼働していましたが現在、稼働中は鹿児島の九州電力川内原発の2基だけ。原発はなくても電力は足りています。渋谷の街頭で取材に応じた青年からは、これらの事実について「知らなかった」と驚きの声が出されました。
現在も9万人以上が避難生活を余儀なくされている福島の原発事故は収束していません。福島第1原発では事故後、地下水が原子炉建屋に流入し高濃度の放射性汚染水が発生。たびたび海に流れ出るなどし、重大な環境汚染につながるものです。東電は1~4号機の周囲約1・5㌔の地中を凍らせることで建屋への地下水の流入を防ぐ凍土遮水壁を計画。今年3月には「完全閉合する段階」としながら7月19日、「完全閉合は考えていない」と方針転換をし、「汚染水を完全に管理できるという説明だったはず」(県関係者)と批判を受けています。
また、東電は事故当時、社内マニュアルを無視して原子炉内の燃料棒が大量に破壊する「メルトダウン(炉心溶融)」が起きていたことを隠していました。社内の調査委員会によって「炉心溶融」を2カ月間も発表しなかったのは当時の社長の指示だったと判明し、6月21日に現在の広瀬直己社長が「隠ぺい」を認め謝罪。経営を優先した国民への欺瞞であり、到底許されません。
安倍首相が「世界最高水準」という新規制基準による原子力規制委員会の再稼働の判断も問題です。6月20日、規制委は運転開始から40年を超えた老朽原発である関西電力高浜原発1、2号機の運転期間の延長を認可。審査では重要設備の耐震性を調べる試験を先延ばしにしました。原発は運転期間が長くなるほど壊れやすく、特に高浜1号機は廃炉が決定した九州電力玄海原発1号機と同レベルでもろくなっているといいます。同原発の3、4号機は今年3月、大津地裁が規制委の新基準に「不安を覚える」と運転停止を命じ、7月に停止撤回を求める関電に対し再度、「停止」が命じたばかりです。
原発は電力会社任せでは危険を防げません。規制委の認可は司法の判断を踏みにじり、住民の安全より電力会社言いなりの原発依存です。大学1年の女性は「福島の事故が解決していないのに2基も動いているのがあり得ない。原発は全部止めるべき」と話します。

貯蔵庫満杯表
国民・青年の多数は再稼働反対
規制委や電力会社の無責任ぶりを助長しているのは、福島の事故などなかったかのようにもうけ優先と安全軽視で原発に固執する安倍政権の姿勢です。安倍政権は民主党政権が決めた「2030年代の原発稼働ゼロ」を白紙撤回し、14年4月の閣議決定「エネルギー基本計画」で継続的に稼働する「ベースロード電源」に原発を位置付けました。その後も30年度の原発比率を20~22%とし、安倍政権はその達成のために「原発30基台半ばの再稼働が必要」と公言。昨年は川内原発の再稼働を強行し、高浜原発、愛媛の四国電力伊方原発の再稼働も狙っています。
原発はもともと未完成な技術で、ひとたび事故が起きればコントロールできない危険な存在です。原発の使用済み核燃料の問題も深刻で、再稼働させれば数年で満杯になる使用済み核燃料の貯蔵プールが続出します(右上表)。4月の熊本地震では川内原発の事故が懸念され、同地震の延長線上にある中央構造線断層や「南海トラフ」の活動の活発化の恐れもあり、近くの伊方原発は重大事故の危険性があります。再稼働は早急に白紙にすべきです。
この間の世論調査でどれも再稼働反対が多数派となるなど、国民・青年の思いは「原発ゼロ」です。6月17日には再稼働反対などをうったえる首相官邸前抗議が200回を超えました。7月10日の参院選では福島選挙区で安倍政権の現職の閣僚に「県内原発の全基廃炉」を掲げる野党統一候補が勝利し、同日の鹿児島県知事選挙でも「川内原発の一時停止」を掲げた候補が当選。安倍政権の原発推進に審判を下しました。

再生エネルギー大幅に増やして
福島事故後、日本で太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの比率が急激に伸び、太陽光の認定容量はこの4年で約180倍、約8千万㌔㍗に増加。しかし安倍政権は原発再稼働の障害になると再生エネの普及を抑え込み、電力会社による再生エネの買い取り拒否を野放しにしています。国際再生可能エネルギー機関は太陽光発電の費用が25年までに1㌔㍗時5~6円になると試算。安倍政権が極力低く見積もった原発コスト=10・1円の半分です。世界の再生エネ発電量は原発の2倍以上になっており、再生エネの普及は環境保全や地域の雇用の創出などに道を開くものです。政府は「即時原発ゼロ」を政治決断し、再稼働を中止して全原発で廃炉プロセスに入るべきです。省エネ・節電の徹底と再生エネの大幅導入で30年までに再生エネの比率40%の達成は可能です。
岩手出身の男性(大学1年)は「福島に友だちが居て、原発はやめてほしい。再生可能エネルギーに期待したい。今後の選挙では再生可能エネルギーを推進する人に投票したい」と話します。