あらゆる差別許さない社会を 相模原障がい者施設殺傷事件

神奈川県相模原市の障がい者施設「津久井やまゆり園」に7月26日未明、男が侵入し入所者らを殺傷する事件が発生しました。事件の大きさに社会に衝撃が広がっています。差別を許さず、誰もが安心して生きられる社会の実現に向けて何ができるか考えます。(文中は一部仮名)

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▲「津久井やまゆり園」の門前で事件の犠牲者に献花をする人たち(8月3日、相模原市)

 

事件の背景に差別意識
緑に囲まれた閑静な地域に衝撃が走りました。殺傷事件は7月26日午前2時45分ごろ、「津久井やまゆり園」にナイフを持った男が侵入し、暴れているとの110番通報があり発覚しました。入所者19人が亡くなり、職員ら27人が重軽傷を負う、戦後に発生した刃物を使った殺傷事件としては最悪レベルの犠牲者を出す事件となりました。その後、同施設元職員の男(26)が津久井署に出頭し、神奈川県警は殺人未遂と建造物侵入の容疑で逮捕しました。
容疑者は警察の取り調べに対して「ナイフで刺したことは間違いない」と容疑を認めており、障がい者を憎悪するような趣旨の供述をしているといいます。その後も被害者への謝罪はなく、障がい者への差別的発言をくり返すなどしています。
今回の殺傷事件は人種、宗教、性的指向などに対する差別意識や憎悪を動機とするヘイトクライム(憎悪犯罪)です。容疑者は「津久井やまゆり園」に勤務していた今年2月18日、他の職員に「重度障がい者を殺す」と発言し、犯行をほのめかしていました。また同月、大島理森衆院議長に宛てた手紙で「私の目標は重複障害者が安楽死できる世界」など障がい者への差別、人権を踏みにじる思想を表明していました。こうした容疑者の思想は、障がい者を「不要」と見なすナチス・ドイツのヒトラーの優生思想に通じるものです。第2次世界大戦中、ナチス・ドイツは障がい者を「生きるに値しない命」と呼び、7万人以上を虐殺しました。

安楽死計画で虐殺に使われたガス室(『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』熊谷徹著、高文研、69㌻)

▲安楽死計画で虐殺に使われたガス室(『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』熊谷徹著、高文研、69㌻)

「不幸」決めつけないで
事件から約1週間後の8月3日、「津久井やまゆり園」にはさまざまな人が追悼に訪れていました。電車とバスを乗り継いで献花に来た吉田良一さん(40代)は精神疾患があり、週2回精神科のデイケアに通っています。吉田さんは「事件を知って言葉にならない。怒りよりも悲しみが強い」と話します。「まだ事件は終わっていない。事件でけがを負った人、家族も傷ついている。今はまだ悲しみが整理できない」
「障がいのある家族がいる人にとっては考えさせられる」と献花に来たのは大川健二さん(41)。大川さんの父親(70)は10年前に脳出血の後遺症で右半身不随になり、その後は家族で在宅介護をしています。「重度障がいの人だけを狙った計画的な犯行で許せない。施設への入所を希望する人に不安が広がらないか心配」と話します。
大川さんは「障がい者は不幸をつくることしかできない」という容疑者の主張に「それを決めるのは彼じゃない」と反論します。大川さんの父親はうまく言葉を話せませんが、指を使って感情を表現し、暑い日はクーラーを指さして「涼しくして」と表現します。大川さんは「介護は大変だけど、父の喜怒哀楽が伝わってくる。日々、いろんなことを感じて生きていると思う。差別をなくすことが事件を生まない力になる」とうったえます。
差別を許さず、個人の尊厳が守られる社会に向け、何ができるかが問われています。

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