低過ぎる最低賃金 1500円の政治決断を

8月23日、最低賃金(時給)の引き上げについて議論する都道府県ごとの地方審議会で2016年度の引き上げ答申が出そろいました。全国加重平均で25円引き上げとなり823円になりますが、憲法25条がうたう「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するには低過ぎる現状は変わりません。

▲取材に応じる女性(8月 24日、渋谷)

▲取材に応じる女性(8月24日、渋谷)

全国一律制度確立を
答申によると最高額(東京)と最低額(宮崎・沖縄)の地域間格差は、218円へと昨年から4円広がります。チェーン店などで全く同じ仕事をしても、フルタイムで月3万8千円以上、年収では約46万円もの差になります。地域間格差の根拠とされているのは、物価や生計費、経済活動です。
街の青年からは「(最低額の最賃は)少ない。この額で生活するのは大変だと思う」(専門学校1年、男性)などの声が出されました。
最低賃金の差は、賃金の低い地方から高い地方に労働者を流出させます。地域社会が衰退することを防ぐためにも、全国一律最低賃金制度の確立が必要です。

時給1500円必要
そもそも賃金は労働者の生活費です。全国労働組合総連合(全労連)は、憲法25条にある「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために25歳の一人暮らしでどれくらいの費用が必要かを明らかにするために「最低生計費試算調査」を行い、6月14日に結果を発表しました。それによると、地域間の「最低生計費」に大きな差はなく、全国どこでも時給1500円以上(年収270万~300万円前後)が必要だといいます。しかし答申の最高額の東京932円ですら、法定労働時間の上限とされる月平均173・8時間働いても年額約194万円で、年収200万円に届きません。最低額の宮崎と沖縄は714円で、年額わずか約149万円です。3面2

街頭取材で、各地の最低賃金の答申額(右下表)を見て「もっと上げてほしい」と言う女性(大学1年)は千葉県で一人暮らしをし、都内で二つの飲食店のアルバイトを掛け持ちしています。時給はそれぞれ930円と950円。「仕事はきついし、都内でバイトをしていると家に帰るのが夜12時を過ぎることもある」と言います。最低賃金時給1500円を求める声が上がっていることについて、初めは「高過ぎるかな」と話しましたが、調査結果を伝えると「高過ぎないと思った。(今の最賃で)年収200万は低過ぎる」と話します。

みんなが潤う最賃に
低過ぎる最低賃金は、雇用の不安定性とともに多くの労働者の生命を脅かしています。歴代政権の下で進められた雇用破壊は安倍政権の下でさらに進められ、非正規労働者数は1997年の1152万人(23・2%)から2015年の1980万人(37・5%)へと、828万人も増加しました(総務省「労働力調査」)。働く貧困層も増え、国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、生活保護基準に届かない年収200万円以下の労働者の数が14年には1139万人で24%に達しています。
労働組合や市民がうったえてきた「最低賃金時給1500円に」という要求は政治を動かし、7月の参院選では共闘した4野党が共通政策に最低賃金千円以上を掲げました。安倍政権も最低賃金を早期に最低800円、20年までに平均千円に引き上げるとしています。しかし「年率3%程度」という引き上げ目標で、順調に推移しても全国で平均千円に到達するのは23年です。
昨年まで埼玉の大学に通い一人暮らしをしていたという男性(23)は学生時代、「学業の合間に派遣とアルバイトで働いていた。週6日働いても月に8万。仕送りがなかったし、もう2万あったら良かった」と当時をふり返ります。安倍政権の目標について「十分じゃない」と言います。「最低賃金が上がることで、みんなが潤う。将来、子どもができたときのことを考えてもその方がいい」
欧米諸国の中には、中小企業支援と併せて最低賃金の大幅な引き上げを行った国もあります。米国では07~09年の間に最低賃金を41%引き上げ、同時に中小企業に対しては5年間で8800億円の減税措置を実施しました。中小企業支援と併せて「今すぐどこでも千円。1500円を目指す」政治の決断が求められます。