安倍政権が「消した年金」

「給料も低く、保険料の支払いは負担が大きい。自分たちは受け取れないと思いながら払っている」―。渋谷で取材に応えた青年は年金制度への不信感を話しました。安倍政権はアベノミクスの「成果」を演出するために、国民から集めた年金積立金を株価のつり上げに利用し大きな損失を出しています。年金制度がどうあるべきかを考えます。

年金受給に不安広がる
8月26日、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2016年4~6月期の運用実績が5兆2342億円の赤字になったと発表しました。
渋谷で取材に応じた会社員(男性、31歳)は「制度として支えないといけないから必要だと思って保険料を払っている。若い労働者が減って、団塊の世代が高齢者になってきている。自分がもらえないのはしょうがないと思う」と話します。年金積立金の原資は、老後や障害を負ったときの保障として税金とは別に国民が支払う保険料です。日本では20歳以上の国民が原則加入する「国民皆年金制度」となっています。全ての国民が20歳以上になると加入する国民年金、会社員が加入する厚生年金、教員や公務員が加入する共済年金があります。
%e7%a9%8d%e7%ab%8b%e9%87%91 老後、年金を満額受け取るためには40年間納め続けなければなりません。給付額の少なさも問題で、青年にとって年金への不信感や老後への不安につながっています。

 
年金を株投機で運用
今回、損失を発表したGPIFは、国民が納めた公的年金の積立金を管理・運用する機関です。1961年に「年金福祉事業団」として設立されました。国民から集めた積立金をつぎ込んだ大規模保養施設を各地に建設し大きな損失を出したことなどから批判を浴び、再編を重ね06年に現在の組織となりました。世界でも異例の130兆円という巨額の資金を運用しています。GPIFには年金積立金の「安全かつ効率的な運用」が義務付けられています。しかし安倍首相は14年1月、GPIFについて「成長への投資に貢献する」と宣言。GPIFは、14年10月に運用の組み合わせである「基本ポートフォリオ」(資産構成)を見直し、それまで24%だった株式の比率を50%に倍増させました(左上図)。株式比率を上げたことで、株価の急落の影響を受けやすくなり、今回の巨額の損失を生む原因になりました。

国民の生活支える制度改革を
安倍政権はアベノミクスの「第三の矢」として、年金積立金の運用変更を柱の一つとしています。大量の年金積立金を株式市場に流し込み、海外からの投機マネーも呼び込むことで、実際の経済とはかけ離れた株高・円安をつくり出し、見せかけの「景気回復」の演出をしてきました。国が大量の公的資金を株式市場に投入することは市場をゆがめ、株価の乱降下を招きやすくなるなど問題が多いため、「金融大国」の米国もやっていません。
Print 安倍首相は「長い目で見れば利益は出ている」と釈明していますが、6月末の運用資産額は、14年6月以来の130兆円割れになり、安定した収益を得られなくなることが明らかになっています。今年2月の衆院予算委員会で安倍首相は「想定の利益が出ないなら当然、支払いに影響する」と国民への年金支給額を減らすことにも言及しています。街頭の青年は「利益が出るとは限らないのが株式。これだけ損失を出しているし、今後成功する見込みは低いと思うので、できれば運用はやめてほしい」(大学4年、女性)と話します。
安倍政権になって、年金給付はマイナス3・4%と大幅に減っています。国民には「財政が苦しい」と支給額を削り保険料値上げを押し付けながら、「アベノミクス」維持のために国民の財産と日本経済を危険にさらしています。巨額の積立金はこれまでも浪費型の事業や不透明な支出の温床になってきました。年金基金の運用の民主的な監視と運用のしくみをつくることも課題です。会社員の男性(22)は「国民によく説明して、納得を得て運用してほしい」と言います。
欧州諸国では公的年金の積立金は給付費の数カ月分です。日本でも給付の3年分という巨大な積立金の投機的運用を中止し、給付に回すという国民の年金受給権を保障する立場に立ち返ることが求められます。