自分らしく居られる場所 学校だけでない多様な学びを

不登校の児童生徒が小中学校で合わせて年間約12万3千人(2014年度現在)といわれています。学校が時に生徒にとって行きづらいものになっている中、学校以外にも児童生徒が育ち学べる場をつくることが求められています。(高校生は仮名、増田哲明記者)

 
学校に行けない
さつきさん(3年)は中学3年の時、3カ月間学校に行かなかった時期があります。通っていたのは中高一貫校で勉強が厳しく「『基本的なことは一度で分かれ』みたいな感じがあって、授業のスピードも速くて途中でついていけなくなった」と話します。不登校の期間をふり返り「学校に行かないといけないと思っていたけど、行く勇気がなかった」と言います。さつきさんはその後、保健室登校をするようになり高校に進学した後も保健室登校を続けました。「このままでは単位が取れないから通信制に行った方がいい」と高校の教員に勧められ、現在の通信制高校に編入学しました。今の学校では「一人ひとりに合わせて教えてくれるし、前向きになれた」と言います。
日本には、不登校の児童生徒を対象にした学校外の学習機関として、民間が設置運営するフリースクール・フリースペースと教育委員会による教育支援センター(適応指導教室)があります。国は長らく不登校を「病気」のように見ていました。こうした姿勢を変えようと不登校児童生徒の保護者らが教育行政に働きかけてきました。1992年に国は「誰にでも起こり得る」と不登校への認識を転換しましたが、指導については「学校復帰が前提」のままです。国には、学校復帰にこだわらない支援が求められています。
さつきさんは、フリースクールやフリースペースについて「聞いたことがある」と言います。自身は行く機会がありませんでしたが、そういう場所について「あった方がいい。不登校で自分に自信が持てなくなった人も自信が持てると思う」と話します。

不登校グラフ

 

 

 

 

 

 

命を真ん中に
記者は9月上旬、神奈川の「川崎市子ども夢パーク」内にある公設民営の「フリースペースえん」を訪れました。
「えん」には2016年3月現在、年齢や国籍、経済的状況、障がいのあるなしに関わらず、6歳から47歳までのさまざまな人が集まっています。小中学生のころから不登校だった人や高校を中退した人、昼間「えん」に来て夜は定時制の高校に通う人など、さまざまな高校生年齢の人も来ています。フリースペース内には楽器や本、みんなで集えるソファやテーブルなどが所狭しと置かれ、集まった人はそれぞれに好きなことをして過ごします。夢パーク内のプレーパークでは、思う存分体を使って遊んだり、泥遊びや火起こしができます。
「子どもの命を真ん中に置くことを大事にしている」と言うのは夢パーク所長の西野博之さん。「えん」では「何もしないことが保障されている。自分がどうしたいのかを見つけるようにしている」と話します。
「えん」では毎日、みんなで昼食を食べることにしています。料理は作りたい人が作ることになっていて、「料理がしたくて来る子もいる。料理は『作ってくれた人ありがとう』と感謝される体験で、自己肯定感も高まる」と西野さん。一緒に食べることで「自分だけが学校に行けない」と思っていた人も「自分一人じゃない」と感じられ、元気になれるといいます。昼食は1食250円ですが「えん」への登録は無料で、生活困窮家庭の子どもも少なくありません。過去には「家族で食卓を囲んだ経験がない」という子もいたといいます。「ご飯を作って食べるというのは豊かなこと。暮らしを取り戻すということ」(西野さん)