青年の願いに応える制度を 給付型奨学金に向けて政治を前に

大学の授業料は国立で年平均53万円、私立で年平均86万円です。高過ぎる学費が、青年から学びたい思いや将来の夢を奪っています。「学ぶ権利」の保障を求めてきた青年・国民の声に押され政府は今年、返済の要らない給付型奨学金制度の創設について具体的な検討を始めました。学費負担軽減のために、さらに政府に迫る時です。

(文中は一部仮名、増田哲明記者)

1%e9%9d%a2%e3%83%a1%e3%83%bc%e3%83%b3

奨学金返還の案内を手にする小島さん

 

自由を奪う高学費
経済協力開発機構(OECD)は9月、加盟各国の2013年の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合の調査結果を公表しました。日本は比較できる33カ国のうち32位(3・2%)で、7年連続の最下位は免れたものの、OECD平均の4・5%を大きく下回りました。教育への公的支出の少なさは世界でも異常な高学費の原因となっており、国民の学ぶ権利を侵害し、学生を苦しめています。
大阪の私立大学に通う西岡勇也さん(4年)は、民間の奨学金を月6万4千円借りています。「妹も今年大学に進学したし、家計の負担を少しでも軽くしたい」と奨学金を受けました。大学生活をふり返り「周りの友だちもバイトをしていて、じっくり勉強する時間を取れていなかった。吹奏楽の部活をしていたけど、バイトで来れない人もいて大学生活を満喫できている感じがなかった」と話します。西岡さんは大学院への進学を目指しており、入学金などのために自身もアルバイトをしています。「学費が高いことで、自由が奪われている」と言います。
都内の私立大学に通う高村大智さん(2年)は、年間約120万円の学費を払うために、有利子の奨学金を月3万円借りている他、週4日ドラッグストアでアルバイトをしています。「父親は定年を過ぎているけど、学費を払うために非正規で働いている。学費が高くなければ負担を掛けないで済んだのかと思う」と話します。「奨学金が貸与制じゃなくて給付制だったらいいと思う。まともな職が見つからないと返せるのか分からないし、借金を抱えて社会に出るのは不安」
貸与型奨学金によって、多くの学生が借金を抱えて社会に出ざるを得ません。昨年大学を卒業した小島祥子さん(24)は、2032年まであと16年かけて奨学金を返済する予定です。毎月の返済額約1万4千円は、現在の手取りのおよそ1割になります。「32年まで返していけるのか不安がある」と小島さん。欧州では「学生は将来社会を背負っていく人」と考えられており、国が教育に責任を持っていると、学生時代に民青で学びました。「日本では奨学金がローンになっている。そもそもの考え方自体を改めないといけない」

運動で変えられる
%e5%a5%a8%e5%ad%a6%e9%87%91%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%95今年、給付型奨学金制度に後ろ向きだった政府の姿勢が変化しています。1月の参院予算委員会では、給付制奨学金制度創設の検討を迫った日本共産党の田村智子参院議員の質問に対し、麻生太郎財務大臣は「単なる財政支出になる」「大学に行かなかった人との不公平が生じる」などとして「適当ではない」と答えていました。しかし、8月に安倍内閣が閣議決定した「未来への投資を実現する経済対策」は給付型奨学金について「2017年度予算編成過程を通じて制度内容について結論を得、実現する」としました。文部科学省の給付型奨学金制度検討チームは①無利子奨学金の貸与人数を増やす②年収に応じた返済額にする所得連動返還型奨学金制度の導入③給付型奨学金制度の創設④無利子奨学金の成績基準の緩和―にとりくむとしています。
政府を動かしたのは、全国で上がった青年・国民の声でした。京都ではLDA―KYOTO(Local Democracy Action‐Kyoto=生きやすい京都をつくる全世代行動)が学費・奨学金とブラックな働き方の問題を、全世代に関わる問題と位置付けて活動しています。昨年10月以降、京都府内の駅前や大学門前などで550人分の実態アンケートと京都府・市議会への請願署名8062筆を集め、11月には京都市議会へ請願し、12月には厚生労働省と文科省へ要請行動にとりくみ、今年2月には府議会へ請願を行いました。
京都の私立大学に通う吉田知美さん(3年)はLDA―KYOTOの活動で、省庁要請や府議会で署名の紹介議員になることを依頼するための会派回りに参加しました。各省庁や府議会のどの会派からも「深刻な実態は認識している」という返答があったといいます。2月の定例府議会では、府知事が「3月から京都府、京都市、京都労働局が一緒になって『ブラックバイト対策協議会』を設置し、連携したとりくみを強化していく」と答えるなど、政治を動かしました。吉田さんは「LDAの運動で変えていける、声を届ける運動に意味があると思った」と手応えを感じています。

(つづきは購読して、お読みいただけます)