揺れる日韓合意 真の解決には歴史の反省を

日本と韓国両外相による、日本軍「慰安婦」問題解決のための合意から一年が経過した16年12月末、韓国・釜山の日本総領事館前に市民団体らが元「慰安婦」を象徴する「少女像」を設置。日本政府は対抗措置として駐韓日本大使を一時帰国させるなど日韓両政府の間で亀裂が生じています。「慰安婦」問題をめぐる日韓関係について青年と考えました。

「韓国の人とも仲良くしたい」と話す大学生(1月13日、渋谷)

「韓国の人とも仲良くしたい」と話す大学生(1月13日、渋谷)

日本軍による性奴隷
渋谷の街頭では少女像について「ニュースで見たけど、何が問題になっているのかよく分からない」(21歳、男性)、「(「慰安婦」など加害の歴史を)授業で習った記憶はない」(20代男性)などの声が聞かれました。
そもそも少女像は、アジア各地で日本軍の性奴隷となることを強制された「慰安婦」問題で、韓国の被害者らが日本政府に謝罪と賠償などを求めてソウルの日本大使館前で続けてきた「水曜デモ」(1992年開始)の一千回目を記念して、11年12月に大使館前に市民団体により被害女性の少女時代をイメージした「平和の碑」として設置され、その後国内外で広がりました。
日本政府は「慰安婦」問題に対し、93年に発表した「河野談話」で、旧日本軍による関与、慰安所における強制使役などを認め、「お詫びと反省」を表明し、歴史や教育を通して同じ過ちをくり返さないことを約束しました
しかし06年に発足した第1次安倍政権では「軍による強制性を裏付ける証拠がない」などと発言。第2次安倍政権では、首相自らが「河野談話」の見直し、新たな談話の発表を言い出すなどあいまいな態度に終始しています。これに対して韓国や国際世論から批判や不信の声が相次ぎました。
13年に来日した元「慰安婦」の方からは「歴史の真実を学び、自分の名誉の回復をしてくれたら私の恨みはなくなります」(李玉善さん)、「本当にこの問題で日本が謝罪するのであれば、安倍総理が率先して謝罪し、解決しなければなりません」(姜日出さん)とうったえています。彼女たちが求めているのは、日本政府として「慰安婦」の強制性の事実と日本の責任を認め謝罪すること、そして人間としての尊厳を回復することです。

「日本政府がきちんと対応を」
02-03面.indd日韓両政府は15年12月末、「慰安婦」問題の解決のため日韓外相会議を行い、共同記者会見の場で▽日本軍の関与、日本政府の責任を認め謝罪と反省を表明▽日韓両政府が努力して元「慰安婦」の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷を癒す▽日本政府の予算として韓国政府が設立する財団に10億円を拠出▽韓国政府は、日本大使館前の少女像について「適切に解決されるよう努力する」―などを合意しました。
ところが16年1月、自民党の外交関係合同会議で桜田義孝・元文部科学副大臣が「慰安婦」について「職業としての娼婦、ビジネスだ。犠牲者のような宣伝工作に(日本は)惑わされ過ぎている」と暴言を吐きました。12月末には稲田朋美防衛大臣が侵略戦争を肯定する靖国神社に参拝するなど、日本政府が過去の戦争や植民地支配を真摯に反省していない姿勢が浮き彫りになりました。
「慰安婦」問題は被害者の立場に立って考えなければ真の和解はできません。3月に韓国に旅行する予定だという女子大学生(19)は「日本政府にはちゃんと対応してもらいたい」と話します。

被害者の尊厳回復へ
少女像の設置や撤去はこの問題の本質的な解決にはつながりません。被害を受けた女性の名誉と尊厳の回復のために、日本政府がどこまで真摯な対応を取れるのかが問われています。
今回の問題の背景には、安倍政権が日韓外相合意をもって「慰安婦」問題は終わり、10億円を払ったから一件落着という態度を取っていることに対する韓国国民の怒りがあります。韓国の人々の心に届かない限り、真の和解も寛容もありません。
街頭の青年からも、日本と韓国の関係改善を求める声が出されました。韓国の工場に研修に行ったという女子大学生(20)は「わだかまりがあると技術協力や経営協力もうまくいかないから、相手の国を理解する必要があると思う」と言います。「ニュースでは少女像の問題を見たことがあるけど、背景に何があるのかは知らなかった。学校で日本の被害は学ぶけど、日本が韓国に何をしたかも知らないといけない」
日本で働いている韓国人男性(20代)はテレビ局や政治家のトップの発言が韓国の人を傷付けていることを知ってほしいと言います。「国際社会の中で他の国の立場や考えも学ぶべきだと思う。韓国と日本の人が仲良くなったら、未来は良くなると信じている」
現在、韓国政府に登録されている元「慰安婦」被害者は16年12月に新たに一人が認定され239人で、そのうち生存者は39人となり、平均年齢は90歳と高齢です(19日現在)。日韓両政府は合意を出発点とし、問題の全面解決に全力を尽くすこと、何よりも日本政府が「河野談話」を継承・発展させることが急務です。談話が表明した「痛切な反省」「心からのお詫び」にふさわしい徹底した事実の解明、被害者に対する公式の謝罪・補償、歴史の真実に正面から向き合い、過ちをくり返さないという誠実な姿勢が求められています。