早急にホーム柵設置を 利用者の声聞いて

1月14日、埼玉・JR京浜東北線蕨駅で盲導犬を連れた視覚障がい者の男性がホームから線路に転落し、列車にはねられて死亡する事故が起きました。国土交通省は2020年度までに1日の平均利用者が10万人を超える約800の駅に可動式ホーム柵の設置を決めています。相次ぐ転落事故と駅の利用について街の青年に聞きました。

「ホーム柵の設置駅数の目標が低過ぎる」と話す大学生の女性(2月2日、渋谷)

「ホーム柵の設置駅数の目標が低過ぎる」と話す大学生の女性(2月2日、渋谷)

「慣れている」は通用しない
転落した男性は、日常的に駅を利用しており盲導犬も連れていました。しかし、事故が起きた場所は階段横で歩くスペースが狭くなっていたこと、点字ブロックの側の柱への衝突を避けようとすることも要因と考えられます。また、地下鉄などでは音の反響でホームのどちら側から電車が来ているか聞き分けが難しいなど、目が見えない状態ではホームには危険があふれています。
渋谷の街頭で取材に応えた大学生の女性(21)は事故の原因について「声かけがうまくできていなかったのではないか」と話します。蕨駅は平日には駅員がホームに居ますが、事故当日は休日ダイヤで駅員が不在だったため事故を未然に防止できる環境にありませんでした。
このような事故に有効な防止対策として、日本全国の約9500駅のうち15年度末までに665駅に可動式ホーム柵が設置されました。しかし、ほとんどの駅には可動式ホーム柵が設置されていません。早急にホーム柵の整備を進める必要があります。

安全軽んじる低い目標

▲JR山手線では2016年3月までに全29駅のうち23駅でホーム柵が設置され、人身事故が減少している

▲JR山手線では2016年▲3月までに全29駅のうち23駅でホーム柵が設置され、人身事故が減少している

国交省は昨年12月、「駅ホームにおける安全性向上のための検討会」を発表しました。これによると、2015年度におけるホーム転落・接触事故は利用者が多い駅で多発していることを提言しました。「検討会」では、可動式ホーム柵の設置は1日の平均利用者数が10万人以上の駅から優先的に設置すると目標を決めています。しかし、転落事故が起きた蕨駅の利用者は1日約6万人で、ホーム柵の設置も予定されていましたが事故が起こりました。可動式ホーム柵なしでの視覚障がい者のホーム利用は常に危険と隣り合わせの状態のため利用者が多いかどうかは関係ありません。目の病気で視野が狭くなり、駅で危険な思いをしたことがあるという自営業の男性(36)は「利用者が多ければ声かけをする人も多い。むしろ危ないのは利用者が少ない駅ではないか」と話します。検討会の委員はほとんどが企業の代表と国交省で構成されており、利用者の声が反映されにくいのが実情です。「約9500駅中800駅」という低い設置目標に、視覚障がい者団体からは批判の声が上がっています。
可動式ホーム柵以外の対策として、駅員の増員や内方線付きの点字ブロックの設備拡充があります。このブロックは自分が立っている方向が分からず誤ってホームから線路に転落する危険を減らします。全国視覚障害者協議会(全視協)の山城完治理事は「最近は無人改札、ホーム無人化が増えている」と警鐘を鳴らします。監視カメラの死角になる場所、見た目では分からない障がいもあります。利用者の安全を軽視し、人員削減などによる利益拡大を求める鉄道各社の姿勢が厳しく問われています。

誰でも安心できるホームに
ホーム事故を受けJR東日本は2月1日、蕨、品川、横浜など首都圏30駅で20年度末までとしていた可動式ホーム柵の設置計画を1年前倒しすると発表しました。国交省から鉄道各社に視覚障がい者らを見かけた場合の声かけを徹底するよう要請されたことを受け、東京や新宿など利用者が多い34駅で警備員を増員し、案内の体制を強化することを決めました。
現在、JR東日本管内で最大の利用者数を誇る新宿駅(1日約76万人が利用)でさえ可動式ホーム柵の設置は完了していません。国交省によれば、14年度には年間3673件の転落事故が起き、80件が視覚障がい者でした。
連日、転落事故が起きている危険な状況を放置せず、早急な全駅での可動式ホーム柵の設置、駅ホームの安全対策要員を配置するなど抜本的な見直しが必要です。悲劇をくり返さないために、企業任せにせず国が責任を果たすことが求められます。